白いダリアと蒼い薔薇 宙 5





















う―――――――――――ん。




まあ、ね。 わかってたけど、さ。


・・夢好きなら、やっぱ、ほーんのちょびっとは期待するのが普通、だよね?










部屋に入って無言で突き出されたのは救急箱。



もしかして・・・もしかするとカールが手当てしてくれたり?!?!



・・・とか淡い期待を抱いてみた私はちょっと落胆した。

ま、落ち着いて考えてみれば、あのカールが昨日の今日でそんなことする筈無いか。


しかたなく自分でやりましたよ。人生そう甘くないって事だね。








「気をつけろ」

「はあ・・・どうもありがとうございました」


なんだか無性に疲れた。














「ふー・・・ええと」

暇だな、なにしよっか。ていうか一体なんだったんだ、カール・・・






「あれ?」

すぐそこの部屋のドアがすこーしだけ開いている。閉め忘れかな。


「・・・?」

好奇心で覗いてみる。ん?誰もいないのかな。でも電気ついてるし・・・

もうちょっと開いてみよ・・うげっ!??



「おや、どうかされましたか?」





なっ・・・


何故に背後にソロモン・・・っ?!





どうかされたどころじゃないよ!大いにびびったよ!

この人、驚かすのが趣味なんですかっ?!





「丁度良かった。貴女とお話したいと思っていたんです。今は暇ですよね?」

「へ・・はあ、まあ」

「では中へどうぞ。椅子が足りないのでベッドでいいですか?」


生返事をするかしないかの内に部屋に通され、ベッドに腰掛け。

そういえばこのベッドを貸して貰ったんだよなあとか懐かしんでる間に

ソロモンはデスクの椅子を引いてきて、クリップで何枚かの紙が挟まれたボードとペンを私に手渡した。

そして椅子に座るとノートパソコンを開き、何やら操作した後、話を切り出した。


「・・・さて。さんにはこれから僕の質問に答えてもらいます」

「・・・はい」

「それが終わったらその紙に書いてある質問にも答えてください。

 わからなければ飛ばしていいです」


ちらりと手元の紙を見たが、一問一答形式・・に見えた。



「ではまず・・・貴女の好きな色は何ですか?」


は!?好きな色?え、いきなり何を聞き出すんだこの人は・・・


「・・え、ええと特には無いですけど・・・青色かなあ」



「はい。・・・では針葉樹はお好きですか?」


・・・・・針葉樹? ・・って言ったよね?今確かに・・・


「えー・・と。 触ったら痛いですけど、モミの木とかは好きです。

 クリスマスツリーにも使われてますし」




ま、マジメに答えていいのか?これ。

ていうか何なんだこの質問。意味不明だ・・・



・・・はっ!もしや何でもない質問に見せかけて実は心理テストか何かか?

それなら分からないでもないけど・・・針葉樹って。




「それでは次に。 駅のホームで重い荷物を持っているご老人がいたら、どうします?


え、今度は一般常識?  なんか、ロシア編のアンシェルを思い出すシチュエーションだね。


そりゃあ・・できる範囲で持ってあげたいなとは思いますけど。

 ・・あ、でもあんまり重いのは駄目です。体力、そんなに無いですから」









そんなこんなで続く世にも奇妙な質疑応答。

後半になると、更におかしなことになっていた。








ところでさん。昨日の夕飯のスープ、おいしかったですよね〜

ああ!本当ですよね!煮込まれた豆が特に。誰が作ったんですか?

ええと、昨日は・・・ああ、ロナンですね

・・・? え、誰ですか?

ここの研究員の一人です。今回、さんの護衛に充てたんです

「(うわ、護衛とかつけられてたんだぁ・・;)護衛・・料理も得意なんですか?凄いですね〜

「今日見てまわった実験農場の一角に彼専用の無農薬栽培の畑があるんです。

 さんのここでの食事には全てその野菜が使われているんですよ。

 ですが・・ふふ、もう一人の護衛――アレンというのですが、彼はもっと凄いですよ」

「(なんで護衛、二人も?!)何が凄いんですか?」

「それは見てのお楽しみです。では次、ボードの方に移ってくださいね」



ああ、聞きたかったのに。

ていうか、見てのお楽しみって、特技が披露される時ってことで、

護衛が力を発揮する・・・即ち、危険な時って意味だよね?

見る余裕、あるのか?





・・・まあいいや。とりあえず次は筆記テストかー。










・・・ん?



ぺらり。



・・・んん?



ぺらり。





紙をぺらぺらと捲ってざっと中身を確認してみただが、首を傾げてしまった。



まず一問目。


紙の横幅いっぱいいっぱい使って全部で十行ほど、延々と1,2,3という数字で埋め尽くされている。

一番下に解答欄が一つ。問題文も何もナシ。




・・・なんじゃこりゃ。








そして二問目。

これは一行だけだ。しかし。



なんだか全部象形文字。





はいぃ?!






え、ちょ、ホントに何なんだ、この筆記テスト・・・!








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