白いダリアと蒼い薔薇 宙 2
「〜、〜♪」
上機嫌で花を摘む。その手には既に何本もの花が握られている。
ちなみに今手に取っているのは青い彼岸花。
・・・はっきり言って気持ち悪いが、彼岸花だと思わなければ大丈夫だろう。うん。
他にも青のコスモス、青の菊に青い向日葵・・は、やめとこ。いくらなんでもこれはあわないよね。
ていうかなんで青ばっかり? 青い薔薇は見ないし・・・
―――、ガサガサァッ!!
「っうわああァあぁあああ!?!?!」
突如として現れた赤くて小さな影に悲鳴ともなんともしがたい叫び声をあげて、格好悪くも尻餅をつく。
見開いた目に映ったのは、赤いフード付の服を着た七歳ぐらいの男の子・・・・多分、実験体とされる子供。
彼の方からしても人に会うのは予想外だったようで、しばらく両者ともに硬直した後、最初に口を開いたのは彼だった。
「・・・・・だれ?」
「え?・・ええと・・・・・っていうの。あなたは?」
「・・・ソラ。 はここにすんでるひと?おとなのひととおなじなの?」
「違うけど・・大人の人はすぐそこら辺にいると思うよ?一緒に来たし」
「! すぐ・・・ちかく?」
すこし警戒したように話すソラの表情は、の返答を聞いたとたん一気に強張った。
目はきょろきょろと忙しなく左右に動き、やがて何かを決心したようにの手をとり、一気に駆け出した。
「ぅえ?! ちょ、な、何? どーしたの!」
「・・・おとなのひとは・・・だめ・・!―――、もっとむこうに・・そしたら、あおいお花がたくさんさいてるの・・
そこまでいけば・・・!」
走る、走る、走る。
相手が幼い子供なのでがついていけないことは無かったが意外に早い。
過ぎ去っていく木々を目の端に辛うじて留めながら、「おとなのひと」等の意味するところをぼんやり考えてみた。
おとなのひと・・・研究者。
ソラ・・・実験体の子供。しかも赤のフードってことはムイと違って翼手状態が近いんじゃ・・・?
でも何で外に。
質問をしようと口を開きかけたところでソラの足がようやく止まる。
よくよく見ると彼は裸足で、脚は見えている部分だけでも年齢に対して随分細かった。
「実験」の被害者の実態と、これから起こるであろう悲劇を想い思わず細めた目を、ソラは怒りと感じたようで、
急にしゅんとしてしまった。
「・・・おねえちゃん、ご、ごめんね・・・?
あのね、あの、ここだったらだれもこないし、とってもきれいだから、それで、その・・・」
「あ! ち、違、怒ったわけじゃなくて、―――――えっ!?
・・・うわあ、すっごい!!!」
いつのまにか達は、林の中の、少し開けた場所に来ていた。
そして、辺りに絡まり沢山の花を咲かせる・・・・・蒼い薔薇。
「こんな所にあったんだ・・・薔薇。きれい・・・」
「でしょ?!しかもぼくがにげてきてからここにはだれもきてないの!ぼくだけのばしょなんだよ?」
「え。 ・・・逃げてきたの?」
「うん!だっておとなのひとはこわいし、ごはんもちょっとだしおいしくないし。
だから、とびらがあいてたときにそとにでたの!そしたらね、ここをみつけて・・・」
「あー・・えっと、その、何日ぐらいここにいるの?」
「え? んーと・・・みっかぐらいかな?あ、でもかなしくないよ! おはなもことりも、おうたもあるからっ!」
「歌? ソラ、歌を歌えるの?」
「うん! ・・あ、でもなんていってるかはわかんないの。なんかいも、なんかいもきこえてくるからおぼえちゃったんだよ」
そうだうたってあげる!とソラは木の傍らに座ったので私も花束を脇に置いて、隣に腰を下ろす。
ソラの歌ってどんなだろう。目を閉じてしばらくすると、ボーイソプラノの旋律が聞こえてきた。
・・・・・・・・あ、れ? このメロディーってもしかして・・・
「ディーヴァ・・・」
「さんっ・・・!!」
! ! !
だあーーもう!何で今日はこう、びっくりすることが多いんだよ! 心臓に悪い!!
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