白いダリアと蒼い薔薇 扉 4
皆で一階に降りて、豪華そうな、リビングらしきところに案内された。
ソファの一つには既に座ってる人物がいた。ヴァン・アルジャーノだ。
私達がぞろぞろと入ってくるのを見て多少眉をひそめたけど、
先に入ったソロモンが事情を手短に説明したら、納得したようだった。
・・・ここってもしかして後々サヤに破壊されるところかな。だとしたらもったいない!
・・・? あれ、ソロモンさーん?一体何処に行くんですか?
ん?おおっと、戻ってきた。 早いな。
・・紅茶? ・・2人分。
「僕としたことが、淹れた紅茶を二階に置き忘れてまして。
・・・大分さめてしまいましたが、それでもいいですか?」
・・・紅茶淹れるの、やけに早かったんだな。
一分も経ってなかったしポットのお湯と紅茶パックで・・いやいや!
この金持ち集団がそんなことするはずが・・
・・・どっちにしろ紅茶片手に駆けつけるソロモンを見なくて良かった。
「・・い、 ・・・おいっ!」
「・・は、はいっ!!?」
「・・・話を聞け!」
ヘンな想像を断ち切る苛立った声に慌てて顔を上げると困ったように苦笑するソロモンと目が合った。
声の主はどうやらその隣に座るカールだったようだ。
「今、あなたの今後について話していたのですが・・
・・・、貴女には・・貴女には、戸籍が無い様なんです」
「・・・えっ?」
やっぱり無かったか。驚いた顔でもしとこっかな。
「そんなはずは・・あ、でももしかしたら私、日本人じゃなくて、どこかの国で生まれたのかも」
「それもありません。一応世界中の戸籍も調べてみましたが・・何処にも、何もありませんでした。
・・・写真や名前や業績・・・・・すべての記録が」
世界中?! デスノのLかよ!
「あと・・・非常に言いにくいことなのですが、
我が社・・サンクフレシュ・ファルマシーという製薬会社は、実験上のデータなどは絶対機密になっています。
ですので、ほんの少しでも疑いがあるといろいろと面倒なことになってしまうんです」
「・・・ええと。つまり、私がその秘密を持ってるかもしれなくて、一般の人に漏らされると困る・・ってことですか?」
「そうです。 戸籍も何もかも無い人なんて、めったに存在しません。記憶も失っているようですし・・
・・・何らかの事故か事件に巻き込まれた可能性が高い。 なら、少なくとも只の一般人ではありません。
それで、提案があるのですが・・・」
「?」
「こういう場合、疑いがかかった人の処分については下のほうの、部下達に任せてあるんです。
・・しかし、貴女は記憶喪失です。住んでいた場所は分からない。帰る家も無い。
――――そんな状況で、知らない人々に監視や・・・まあ、ここでは言えないコトをいろいろされたりしたら、
とても耐えられるものではないでしょう」
・・・・・あの、ちょっと。 今、聞き捨てならないことを聞いてしまった気が。
・・気のせいだよね? 拷問とか・・・実験体とか・・・しないよね?!・・・
・・・・・・・・やりかねん・・・
大体、「処分」からして怪しいっつの。
「――――ですが、特例として、CEOである僕が身元引受人になれば、僕からの監視だけで済むんです。
・・・ああ、大丈夫ですよ。監視といっても形だけです。目の届くところにいてくださればそれでいいですから」
ん? あれあれ? なんか展開が微妙なことに。
「しーいーおー?」
「実務部門での最高責任者のことです。心配しなくても、衣食住は最高級のものですよ。
・・・外出は少々我慢してもらうことになりますが。」
え?何? ・・・解放してくれないの?・・・もしやこれって。
「・・・・・・軟禁?」
「・・・まあ、酷く言えばそういう事になりますね。しかし・・・決して不自由はさせません。ですから・・」
「あ、別にいいですよ? 何処でも連れてっちゃってくれて構いませんから」
「えっ?! いいんですか?」
「いいって言ってもらいたくって説得してたんじゃないんですか?」
「それはそうですが・・・」
必死に説得を試みる言葉を遮ってあっさり了承すると驚いた声が返ってきた。
・・まあ、軟禁OKな人なんていないだろう。私だって相手が普通の人だったら最初っからお断りだ。
だけど考えてみて欲しい。相手は大企業のCEO。衣食住は最高級。
そして私はこの現代に珍しく戸籍その他全く無し。お金も無いに等しいから極貧必須。
・・・だったら利用しとくべきでしょう!
何とかして疑いを晴らした後はお金もらって逃げればいいし!
働くとこ無かったら赤い盾に行こう!
ああ・・・ブルジョア生活万っ歳!!!(何か違う)
ふふふ・・・と耐え切れず気味の悪い笑みをもらす。
見てしまったのは、幸運にも(?)ヴァンだけだった。
「・・・・・?!!(真っ青)」
「♪」
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