白いダリアと蒼い薔薇 蜜 17
「記憶喪失・・・・・ディーヴァの執着、・・・・・」
「・・・・・・・・」
・・・只今、ソロモンが何やら真剣に考え込んでしまわれて暇です。
だんだんわかってきたけど、ソロモンって一旦考え事をしだすと周りの事を全部シャットアウトするんだよね。
船の中でも散々私を放置してたし。
そりゃあ考え事をするには良い癖だけど、放っとかれたこっちの身にもなって欲しいよ。
しかも独り言の中に時々聞かせちゃならない単語が入ってる気がするし・・・無意識?
「・・・・・・シュヴァリエ、はさすがに無いか・・・」
・・・・・え、あれ、今・・シュヴァリエって言いました?
ちょ、それってさらっと言っちゃ駄目な単語なんじゃ?!
それに今考えてるのって私の不思議な発言についてだよね?どこをどうすればシュヴァリエの話に?
「あ、。ちょっとすみません」
「はい?・・・・・っうぅえ!?!?」
急に呼ばれて振り向いた途端に肩に手が添えられ、更に首筋にもう片方の手が触れてきて思わず硬直した。
そのまま動けないでいると彼の手は私の首に当てられているガーゼに触れて、
そのままぺりりと半分程剥がされた。・・・いきなりどうしたんだ?!
「あ、あの・・・?」
「・・・・・・・そんな筈無い、か」
ぺたり。
ガーゼを元の通りに貼り直し、ソロモンはため息をついた。
なんだか凄く悩んでいる様子なのだが、私の一体どこに悩む要素があるのだろう?
・・・さっきの「動物園」発言か。もしくは「神の啓示☆」か。
確かにあれは自分でも怪しさ爆発だと思う。普通信じられない。
それを一応でも信じてくれたソロモンは相当単純なのか、それともあえて追及しなかったのか・・・
・・・多分後者だろうな。じゃなきゃアホすぎる。
「・・・まあ、ひとまずこの件は置いておくとして」
「はあ・・・(置いておくのか)」
行き詰ったのか、問題を棚上げしたソロモン。
私をやっと膝の上から下ろし、自身も席を立って歩き出した。
どこへ行くのかと怪訝に思っていると、私にも来るように呼ばれたのでついていく。
案内されたのは・・・確か仮眠室、と紹介された部屋。
「ここがの部屋になります」
「へー・・・・ってえええ?!」
「・・・やっぱり狭すぎましたか?」
「え?狭っ・・・これで?!!」
高級ホテル並み、いやそれ以上の部屋見せといて狭すぎ、は無いだろう。
やっぱり私には彼の感覚が理解できない。
「もうこれ以上無いって位に豪華ですよ!」
「そうですか?それは良かった。
・・・しかし、せっかく用意したのにあまり活用できなさそうですね・・・」
「なんでですか?」
問うと、彼は困ったように微笑んで答えた。
「だって、ディーヴァがを気に入ってしまいましたから。
おそらく彼女のことですから、四六時中貴女を傍におきたがると思いますよ」
「・・・・・・!」
「船で僕が言った事覚えていますよね?下手するとそれよりも酷いことになるかもしれません」
「・・・・・・え、と。まさか私・・・死にませんよ、ね?」
「出来るだけ努力はしますが・・・・・」
・・・・・い、言い淀まないでええええ!!!
とっっっても不安になっちゃうから!
「まあその辺りのことも僕が何とかしてみます」
「あ、はい。お願いします・・・切実に」
さっきから課題が棚に山積みになっている気がするよ・・・
「・・・なので、今のところは夕食に出掛けましょう?個室を予約してあるのでゆっくりできると思います」
そう言って何故か室内に入っていったソロモンを追って部屋に入ると、
ベッドの上に置かれたものに眼が留まった。
「・・・・・あ」
それは、見覚えのある大きなボストンバッグ。
私の唯一の持ち物。
「・・・!」
思わず駆け寄ってバッグを開く。
中身を確認したが、ベトナムで閉じた時の状態そのままだった。
万が一、詳細に調べられると困るもの・・・漫画や携帯がひとまず無事のようで安心した。
・・・・ってもしかして携帯、電源入れたままなんじゃないだろうか。
どうせ使わない(使えない)から電源は切っておこう。
電源を数秒押すと、あっけなく画面は真っ暗になった。
この中には日常の写真とか、本当に少しだけどBLOOD+の画像も入ってる。
ロックをかけているとはいえ、そんなもの、ソロモンたちの手にかかれば無きに等しいだろう。
大半は聞かれても記憶喪失を最大限利用して何とかなりそうだけど、アニメ画像はとても言い訳できない。
むしろ、そうなるくらいならさっさと削除した方がいいのかな・・・
あああでもでも、消しちゃったら二度と見れないんだよ?それは悲しい!
「はあ・・・・・」
「どうしました?荷物に何か、足りないものでも・・・?」
携帯を見つめながらため息をついた所を見られていたらしい。
心配そうに声を掛けてきたソロモンには、何事も無かったかのように、何もないと返した。
携帯に何かあると思われてもいけないのでさっさとそれをバッグの中に戻し、チャックを閉める。
とりあえずこのバッグが手元にある内は中身について考えられるだろう。
しかしデータはすぐに消せるからいいとして、漫画はどうしよう・・・焼却?バレるな、確実に。
「あ、。ちょっとこっちに来てもらえます?」
「何ですか?」
ひとまず荷物のことは後で考えることにして、ソロモンの元へ移動する。
傍に行くと、彼は重厚なクローゼットの前にいた。そしてその手に持った服をはい、と私に差し出す。
着ろってことだろうか。しかし何故?
「・・・ええと。これ、着るんですか?」
「はい、これから夕食に出掛けるので。お願いします」
「え、でも、この格好のままでもいいんじゃ・・・」
「それでも構わないんですが、少し皺になってしまったようですし、外は寒いので」
「はあ・・・」
ううむ・・・またもソロモンに押し切られてしまった。
皺って一日着ただけで、そんなに・・・あれ、意外とあった?
さり気無くスカートの裾を見てみたら、思ったよりも酷かった。
さすがにぐっしゃぐしゃとまではいっていないけど、ちょっと土汚れとかも見える。
何でそんなに汚れてるのかと思ったけど、これ、きっとあれだ。某歌姫に全身丸ごと絞殺されかかった時のだ。
あの時は外見とか気にする余裕も無かったからな・・・今更だけど、よく生きてられたよ私・・・
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