白いダリアと蒼い薔薇 蜜 15
あわわ・・・アンシェルが!アンシェルがいる!
姿はリーザさんだけど!さっき思わずリーザさんって呼びそうになったけど!
・・・すっかりリーザさんになりきってたよね、最初。
私なんて、すっかり『リーザさんって女性のシュヴァリエ?』とか思ってたし。
そう考えると凄く演技派だよな・・・・
・・・・・・ってあれ?え?!
な、ななな何でこちらを見ていらっしゃるのですかアンシェルさーん?!!
気が付いてみれば、かの有名な長兄さんがこっちを見ていた。
カールやジェイムズの様に睨みつけるでも無し。
ネイサンの様に観察する風でも無し。
なんと言うか、これは・・・・見下し?・・・とはまた違った種類のもの、だろうか。
いかにも興味が無さそうで、何の感情も込められていない視線。
・・・物凄く、居心地悪い。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・;」
何だか硬直してしまったように、目が逸らせない。
内心冷や汗をかいて彼と視線を合わせていたけど、数秒の後、視線は外された。
そして何も無かったかのように、彼の手はディーヴァの頭を撫でることを再開した。
・・・・・コメントすら無しですか?!
いや、下手に辛辣な台詞吐かれても凹みますけど。
「―――赤い盾だ。」
「っ?!!」
っび・・・びっくりした! ホントにコメントされたかと思った!
うーわぁ〜・・・見事に声と姿がミスマッチ・・・
せめてリーザさんの声で喋るか、変身(擬態?)解いてから喋ってください。
じゃないと物凄く違和感がっ・・・!
私が一人びくびくしているのを余所に、彼は主人を優しく撫でた後立ち上がり、すたすたと行ってしまった。
向こうのソロモンたちと何やら会話しながら席に座る。会話の内容は詳しくは聞き取れない。
彼が行ってしまったことで緊張が解けたのか、また意識がまどろみ始めた。
・・・ここの空調、気持ちいいんだよねぇ・・・
いつの間にかディーヴァの締め付けも弱まってきたし、これなら、気持ちよく、眠れるかも・・・
――――――パリィイン!!!
「っふぅぇ?!」
突然何かガラスが割れるような音がして、ビクンと身体を強張らせた。
また変な声出ちゃった・・・誰も聞いてないといいけど。
「兄さん、それは・・・」
「殺すということか?」
「本気なの、アンシェル?サヤは・・・・」
さり気なく視線を彼らに向けたけど、何事も無かったかのように話が進んでいた。
こちらには微塵も気付いた様子は無く、ホッとする。
その後も様子を伺っていると、2、3言葉を交わした後、アンシェルが立ち上がった。
それに続くようにジェイムズ、ネイサンが順に立ち上がり、残るはソロモンだけ。
ああ、あったあったこんなシーン。ソロモン、絶対アンシェルの考えに同意してなかったよね、この時。
『兄さんの言葉は僕の意志』とか、私には到底理解できない考え方なんだけど。
彼の思考はやはりアニメどおりだったようで、視線の向こうで、ソロモンが立ち上がるのが見えた。
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