白いダリアと蒼い薔薇 蜜 13
「いいですか、ディーヴァ。決して、味見してはいけませんよ」
「えー?!」
(えー、じゃない!!)
・・・・結局、引き渡されてしまうようです。
渋々、といった風に私の肩の拘束が解かれ、やっと地に足が付く。
だけどそれを喜ぶ間もなく、ぐ、と腕を掴まれたかと思うと凄い勢いで後ろに引っ張られた。
「?!・・・っふぎゅ」
そして締め付け再び。変な音が出たが無理も無い。
なんせ、彼女は息もできないほどの力で締め付けてくるのだ。
・・・・というか、訂正していいですか?・・・・・正直言ってマジで息出来ない。
「・・・ぅぁ゛・・っ(ぎ、ぎぎぎギブギブギブぅううう!)」
「ふふ、いい匂い・・・」
「はー・・・アンシェル兄さんが到着するまでですよ?」
だ、誰か気付いてえええ!苦しすぎて死ぬ!本気で死んじゃうんですけどこのままじゃ!
へーるーぷーみー!!!
ピピピピピ・・・
「!」
唐突にソロモンの携帯が鳴り、着信の相手を見た彼が軽く目を見張る。
「・・・・・」
メールだったようだ。本文に目を通した後無言で携帯をしまい、こちらに顔を向けた。
「ディーヴァ・・・」
「なあに?」
やっと開放される!・・・と思ったのだが。
「アンシェル兄さんが、あと1時間ほどでこちらに到着するそうです」
「ふ〜ん・・・」
そんな考えは甘かったようだ。しかしそこでディーヴァの腕が少し(本当にほんの少し)緩んだので、
その隙に逃げ出せないかと身を捩ってみた。・・・が、無駄な努力に終わり、
今度は向き合う形でしっかりと抱き込まれてしまった。力はそう変わらない上に、今度は密着度が半端無い。
胸が。胸が気になって仕方ないよこの体勢。
妙にどぎまぎしちゃっても仕方ないと思う。だってディーヴァの色気って本当に凄いし。
・・・あ、何だかとてつもなく申し訳ない気持ちになってきた。何で胸の話なんてしてるんだ自分。
因みに、一人軽い自己嫌悪に陥っているこの状況、実は結構ヤバかったりする。
ディーヴァがさっきからぎゅうぎゅう締め付けてくる力が、どう考えても一般的なそれとかけ離れているのは
きっと気のせいとかじゃない。
現に今も、文字通り呼吸困難真っ最中。このままいくと私の肋骨内臓諸々が今すぐ危機に陥る勢いで。
「・・・っは・・・はっ・・・」
痛い。痛すぎる。おまけに苦しすぎてなんだか意識が朦朧と・・・
・・・・はっ、駄目だ駄目だ!こう毎回気絶してたんじゃ、無防備以外の何者でもないじゃないか!
この状況で気絶なんてしてみろ、次目覚められるかも怪しいんだぞ?!
いや、彼女が相手では意識保ってても無事じゃすまなさそうだけれども!
重要なのはそこじゃなくて、 そう簡単に、 気絶したら、 負けた気がする・・・って言うか・・・・・
・・・・・・・・・あー・・・・。 やっぱ無理かも。
目の前が、白く・・・
「うふ、ふふふ!」
「どうしました、ディーヴァ・・・?
・・・・・・・・・ディーヴァ、彼女は人間なんですから、もう少し丁寧に扱ってください。
お人形ではないんですから、壊さないでくださいよ?」
「んもう、わかってるわよ!ソロモンったら、心配性なんだから」
「しかし・・・」
「・・・この子、いい匂いがするの」
「? はあ・・・」
「こう、ぎゅってするとね、凄く幸せな気持ちになるの。・・・・だからこれは私のよ」
「・・・ディーヴァ」
「私のなの」
-- + ----------------------------------
Back Next
Top