白いダリアと蒼い薔薇 蜜 5










ーーぴちゃ


(・・・?)




ーーぴちゃん

「音・・・?」


ぴちゃ

(え、え?何・・)


ぺた

(足音・・人?)

ぺちゃ・・・

(近づいて、きてる?)


ひた、

ひた、


・・・・・ひた。

(・・止まった?)




足音はがしゃがんでいる所から1メートルあたりで止まった。


そして沈黙。・・何も起こらない。






「だ・・・誰?」



呼びかけてみた、が返答は無い。

かと言って幻聴でもない限り、そこに『なにか』が在るのは確かなのだ。

果たして人間か、獣か、・・・幽霊か。



「まさかね。そ、それは流石に無いから、うん。」


きっとあの音は聞き間違いか、もっと向こうの方のだろう。

だってこんな近くにいる筈なのに何のモーションも起こさないなんて不自然過ぎるし、

ほら、こんな暗闇の中にいすぎたから多分感覚がおかしくなってるんだと思う。

結論。そこには何もいない。





・・・でも・・・・・・ほんと、にそう?










「・・・・・・;」





・・・やばい、本気で怖い。


幽霊?!ユーレイ!?




・・・・い、いやっここは冷静に!冷静になれ自分!

こんな時、こんな時にあり得る最悪のパターン!








・・・・・翼手!



ひぃっ!それだけは嫌だ!


や、でも息遣いすら聞こえないし・・・息、潜めてるとか?

さ、流石にそこまでの理性は残ってないだろう、と思いたい。






更に慎重に、更に息を潜めて相手の出方を伺おうとするだったが、

恐怖と緊張と寒さで頭の中は最早真っ白、

加えて鼓動が、心臓が胸を突き破るのではないかというほど強く感じ取れるこの状況では、

周りの様子なんて探れるはずもなかった。








ドクドクドクドクドクドクドクドク

(あ、やばいこんなに大きな音たてたら気付かれる・・・)







ドクドクドクドクドクドクドクドクン

(でも、そういえばこういうのって他の人には聞こえないんだっけ?)







ドクンドクンドクンドクン

(・・・翼手だったら、もうさすがに殺されてるよね、私・・・・)






ドク、ドク、ドク、ドク、


(ああ良かった、大分落ち着いてきた)







トク、トク、トク、トクン


(・・・・とりあえず、翼手は、いない?でも、さっきの水音が気になる・・・)







そろり、と立ち上がり、暗闇を見つめるが、やはり何も聞こえない。

ならば、と右手を少しずつ前に突き出してみるが、

その手は空を彷徨うままで、そこには何もない様だった。







「い、ない・・?」




情けないくらい震えた声が漏れて、




でも良かった、と右手を下ろして






ぴちゃっ

「え・・・?」





何かが首に巻き付いて、水音をたてた。












「・・・・・・・・・っ!?」






びちゃ、ぬるっ


(・・・っききき気持ち悪い何これ何コレ何が起こってるの!?)





巻きついてるのは多分誰かの両手、でも何かぬるぬるしてて変な匂いするし気持ち悪い上に後ろから両腕もろともがっちりホールドされてて動けない・・・ってひぎゃあぁあああ顔!顔にまで手が!手がっ!!?




まるで意図しているかのように(いやきっとしてるんだろうけど)

そのぬるっとした手は今や私の頬を怖い程ゆっくりと撫でている。





「・・・・っ、」





・・・ヤバい、凄く気持ち悪いのに怖すぎて声出ない。



怖い



嫌だ




気持ち悪い・・っ!






ぺろっ




ぎゃああああみ、右っ!首舐めっ・・・!?ちょ、待っ・・・やばい、フリーズしそう・・・!


ていうか、ていうか!!

先程から背中に押し付けられてる大層な弾力のコレってもしやアレですか!?ということはこのひと女性ですか!?しかももしかしてもしかするとさっきからしてる変な匂いって血の匂いの様な気がしてきたのですが錯覚ですよね?!




女性で、血の匂いで、暗闇に乗じて人を襲う・・・・って

もしかしてもしかしてまさかまさかまさか





「ふふっ・・・おいしそう」




「へっ?・・・って、ぃっ・・・・・!?」



ップっ




痛あぁあ゛―――――――――――――っ!!!




首に!首に噛みつかれてる!つぷって音したよ!自分の首から!あああ勝手に行動してごめんなさい反省してますからもうやめて耐えられない痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛、い・・・!








「・・・っは、ぁ、あ゛・・・っ」







徐々に力が抜けていくのがわかった。

目の前が暗闇じゃなかったらきっと景色もぼやけて見えたことだろう。



次いで意識がふわふわしてきた。何て言うのかな・・・強烈な眠気に似てるかも。

あぁ、ヘリで睡眠薬飲んだ時とおんなじなんだ、この感覚。





・・・何かもう、痛くない、気がしてきた・・・



凄く眠たい、けど、これがもしかして、・・・死ぬっていう、こと?



ははは、グッバイマイライフってか。



うあ〜それは困るなぁ・・・



まだ、たくさんしたいこともあるし・・・





まず、ソロモンに、勝手に行動したこと・・・謝って・・・








・・・ああそうだ、いつか、小夜とも会って、見たい、・・・し・・・









ピピピッ

ピピピピッ



―ガコンッ

ギィッ






「――――!?」



「――――、――!!」







・・・?


・・・・・なにか、きこえ、た・・・?





・・・・・よく、きこえ・・・な・・・・・













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