白いダリアと蒼い薔薇 宙 14










「それにしても・・・」

「?」


やっとヘリから下ろしてもらえたけど、

今度はソロモンが意味ありげに、じいぃ・・っと私を見てきた。

どうやって反応したらいいか分からないから、とりあえず小首を傾げといた・・・ら、

何故か両肩に手を置かれ、はぁ〜・・・と長い溜め息。の後にやっとこさ重い口を開いた。



「ロナン・・・一つ、聞きたいんですけど。 これは誰の趣味ですか」

「は?何の話を・・・・・ぅわーぉウッカリ。

 ・・・あ、因みにやったのはアレンです、私じゃありませんから」



・・・?

私の何がウッカリなんだろう。

ソロモンとロナンさんの視線を追うと、そこには特に何も無い。

あるとすれば、自身の細っこい脚ぐらいだろうか。






・・・って!ちょっと待て自分。

何かさっきから肌寒いなぁとは思ってたけど・・・今の私の格好って。





・下着

・シャツ(妙にでかい)




〜以上〜





「・・・☆♯%っ!?!?////」


ひいぃ!何なんだこの・・「誘ってますv」的な格好は?!

最早コスプレの域だよこれぇぇえ!!


「あ、様も気づいた。
ほんっとにみんな気づかないなんて、びっくりですよねー」

「同感です。まあ、色々騒々しかったので

仕方がないと言えばそうなんでしょうけども」



言いながら残りのボタンをぷちん、ぷちんと留めてくれるソロモン。

でも、素肌に直接ソロモンの手が触れてたりして、何というか、その・・・


・・・ 超 絶 !恥ずかしいんですけどっ!!



赤面するだったが、不意に響いた何かが裂ける音に驚き振り向く。


「ゥ、オオォオオオオッ!!!」


「わ!?すっご・・・ぎゃあ!」


カールがようやく翼手化していた。

しかし、その姿を完全に視界に収める前にぐるりと目の前の景色が反転し、

気付いた時にはソロモンに抱きかかえられていた。




・・・・・・抱きかかえられる?




ぎっ・・ぎゃあぁああ!?

ソ、ソロモンに凄い事されてるのかコレもしかしてっていうかちょ、ま、この格好の時にお姫様抱っこは止めてくれぇえ! 見える!見えちゃうから!!


「い・・いいです大丈夫です自分で行けますって!!」


必死で訴える、が。


「すみませんが、急いでいるんです。・・ちゃんと掴まっていて下さいね?」


にっこり。微笑んだソロモンに見とれ呆けていて、次の瞬間彼が走り出した衝撃に頭がついていかなかった。


「へ?・・・ーぅ、わ!」



ダン、と踏み込む衝撃に息も付かせず、続けざまに感じる強い重力と浮遊感。

収まったことを確認してぎゅっとつむっていた眼を開けると

そこはもうヘリの機内で、端の座席でびびって縮こまっているヴァンがいるだけだった。

外の景色からして既にヘリは飛んでいるらしく、

恐らくソロモンが私を抱えて飛び乗ったのだろうと推測できた。

まあ、そりゃあヴァンもびびるわな。



「なっ・・ソ、ソロモン!?驚かさないで下さいよ!」

「すみません、ヴァン。あ、それと、S−25って持ってます?」

「はあ、持ってますけど・・・まさか、彼女に?」

「ええ。・・・有り難うございます。 はい、さん」



はい、と差し出された包み紙。単なる飴に見える、けど。


・・・・・ハッキリ言って、怪しい。



「ええとー。コレは・・・一体?」

「ええ、それはですね、睡眠薬です」


「・・・へ?」



わんもあぷりーず?

・・何か、聞き間違いですかね?




「え・・・えぇ〜と。飲まなきゃ、いけないんですね?」


「そうですね。その方が都合が良いです。これから軍の方にお世話になるので・・・

 あ、コレは危険性が殆どないタイプで、睡眠薬百%ですから安心ですよ」



えええ!?随分ハッキリ言っちゃいますね?

というか睡眠薬で安全とか言われても!



「まあ、飲まなくても特に構いませんよ。・・・強制的に眠らせるだけの事ですから」

「すみません飲ませて頂きます!」


・・・うん、やっぱりおとなしく従っとこう。何が起きるかわかんないし。






ぱくり。


飴玉(睡眠薬百%)を口に含み、水が欲しいなあと感じた瞬間に、それは舌の上でしゅわっと溶けた。

おぉうサンクフレシュ恐るべし!と思う間にも頭がぼんやりしてきて、

ソロモンが私をヘリの席にシートベルトで固定したのが辛うじて認識できたぐらいだった。




ああ、これで大丈夫。


多少ストーリーは変化してたけど、私は死なずに済んだらしい。

はゆらゆらと考えて、目を閉じようとし・・・ふと思い出した事があり、はっと再び開いた。




ロナンさん。



確か彼は、未だ向こうの、2号機にー



「・・・ぁ、っ!」

「?・・どうかしましたか、さん」

怪訝な顔をするソロモン。

なんとかして伝えようと口を開いたが、薬のせいで上手く喋れない。


左右に視線を走らせる・・・いた。左下で飛んでいる2号機のヘリ。

そしてその更に下、ぶら下がる・・・


「・・・っ!!」

「! ああ、余計な虫がくっついてきてしまったようですね・・・」


・・・やっぱり物語は、シナリオ通りで進んでいる。

私に続いてソロモンもデヴィッドさんに気づき、・・・ヘリごと撃ち落とすように命じた。



何でこんなにあっさりと。

駄目。嫌だ。ロナンさんがまだ乗ってるのに!


「・・・・・!」


想いは声にならず、相手の袖を弱々しく掴むだけに終わった。

しかし効果はあったようで、ソロモンはこちらを向いた。

さん?どうしたんですか・・・?」

話を聞いてくれるらしい。

視界が揺らいで回る。眠りの深淵に今にも落ちそうだったが耐え、一つずつ言葉を紡いだ。


「ロ・・・ロナンさん、が、死んじゃ・・、ぅ」


僅かに目を見開くソロモン。だが一瞬の後、ふわりと微笑む。

「・・・大丈夫ですよ、さん。彼は死ぬようなヘマはしませんから」

だから・・・安心しておやすみなさい。


つい昨日の夜の様にふわっと頭を撫でられて、

は意識を手放した。






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