白いダリアと蒼い薔薇 宙 13










「・・・・え?」

・・・ソロモンと一緒に乗れる訳ではないのか。



まあ仕方ないか、と諦めかけただったが、・・・何か引っ掛かる。

何だろう?何を心配してるんだ私?



えーと・・・これからは・・・カールが翼手ver.になって小夜と戦って、・・・



頭の中に『ジャングル・パラダイス』の一場面を思い浮かべる。

あの回はいつにも増してスプラッタなシーンが多かったけど、

ソロモンが沢山出てきて嬉しくて、何回か見た筈だ。

爆破されたヘリから落ちても平気とか、デヴィッドさんって本当に丈夫・・・・




・・・爆破された、ヘリ?




飛んでったヘリは一機。爆破されたのは一機。

・・・そしてそれは、主要人物が誰も乗って無かった、2号機。






・・・それってもしかして、もしかしなくともこのヘリじゃないか。





「・・・いやいやまさか〜。」

「・・様?乗りますよー。因みに私が操縦します」


・・・そうだよね、なんだかどんどんストーリーも変わって来てるし、大丈夫だよね。

まさか本当に爆破とか、あり得ないし・・・怖がることなんて何も無いさ!!



足が…動かないよ畜生。







「?様ー乗りますよってば」


ぐいぐいと押されて気付けば既にヘリの中。

うん、大丈夫、大丈夫・・だよね。・・・本当に?




・・・確かに、私がいることで多少の変更は有るかもしれない。


でも、果たして物語の流れまで変わるんだろうか?




ソラが助かった。でもその他大勢の子供翼手たちは殺された。


小夜達が来るのが丸一日遅れた。それでも館は爆破されたし、今こうして逃げだそうとしている。




なら、たとえ私やロナンさんが乗り込んでいたとしても、この2号機は狙撃されて墜落してしまうのでは・・?


・・・・・。



「あ、の。ロナンさん。私、あっちに乗っちゃ・・駄目ですか?」

「え?えーうーん…ちょっと無理ですかねぇ。

 あっちにはCEOとヴァンと工場長が乗って、それでいっぱいなんですよ。

 ・・・さてと!これでよし。」


がっちょん。無情にもシートベルトで固定されてしまう。


「・・・っ!」

ぞわっと何かが体の中を駆け巡って、思わず震えた。

ああ、やばいよコレ。駄目だ。完璧死ぬって。



・・・死ぬ?

こんなところで?



「・・・・ぃゃ」

「え?」


「嫌、です。向こうの1号機に乗せて下さい」

「だから無理なんですってば。別に良いじゃないですかこっちでも」

「駄目です。あっちが良いんです!」



自分でも凄い無茶を言ってるって分かってるけど、じゃなきゃ私が死ぬ。確実に!


私は小夜みたいな再生能力持ってないし、デヴィッドさんみたく頑丈でもない。

這い上ってきたデヴィッドさんを待ち伏せて先に落としてもいいけど(酷)、むっちゃ怪しいんだよそれ!


変に怪しまれるぐらいなら、ウザいとか思われても単なるワガママで通した方がマシ!




「とにかく!あっちに乗せて下さい!!」

「だーかーら。向こうは定員一杯なんだって言ってるでしょう?

 ってかどうしたんですかいきなり?凄く必死ですけど・・・

 この2号機に何かあるんですか?!」


「・・・何かありましたか?」

「あ、CEO! それが・・・様が、こっちの2号機は嫌だって言って聞かないんですよー!

もーどうにかして下さい!」



遂にソロモンが出てきた。

なんだか呆れた顔をしてたのが、ロナンさんが泣きついた事でさらに呆れ顔に。

言葉に表すとすれば、「・・馬鹿ですかあんたらは」とかだろうか。

酷っ!!こっちは必死なのに!



・・・よーし。こうなったらこっちに直接頼むしかないか。

多少怪しまれても問題無し!頑張れ私!!





「はぁー・・・我が儘言わないで下さいさん。

何があったか知りませんけど時間が無いんです。閉めますよー」



ぎゃあぁああー取り付く島無し!?一刀両断!

やばいヤバいヤヴァいっってマジでいやホントに!



「ほ・・・ホントに嫌なんです!止めて下さいお願いします!!」


「はいはい。危ないですから頭引っ込めて」




 完 璧 無 視 ★




人が下手に出てるのに!酷い!酷すぎるよソロモン!

こんな奴だとは思わなかった!

でもだからって諦められないんだ私は!

諦めたらそれで最期とか、そりゃあ必死にもなるわ!

つーかせめてこっち向きやがれそこの二人ぃ!!




・・・っだあーもー!!

これで駄目だったら不死身のデヴィッドをクッションにして飛び降りてやるぅー!!




半ばヤケになりながらは深く、大きく息を吸った。

その間にも扉は閉められソロモンは二言三言ロナンさんと言葉を交わし、

互いにから背を向けたー・・・
その刹那。




「・・・っいやああぁあああああーっ!!」


叫んだ。




「え、さん?!」
「ちょ、様!?」



思わず硬直し振り向く二人。

驚愕に肩が跳ねる仕草があまりにもユニゾンしていたものだから内心爆笑だったけど、

顔はあくまで真面目に、眼はバッチリ二人を見据える。



そうだ奴らはまだ振り返っただけ、私の状況はまだ何も良くなっちゃいない。寧ろ悪くなってるっぽい。


ホラ、視界の隅で驚いてこっちを見る主人公'ズとか!

本当は赤い盾の興味なんて引きたくないのに叫んだりするからこういう事になる!




あぁもう何で私こんな目立つ事してるんだよ凄く恥ずかしいよ!

・・・それもこれも1号機に乗せてくれない分からず屋のロナンさんとソロモンのせいだぁー!!

特にソロモン!あんたはカールが乗り込まない事分かってるだろうに!

あ、なんか涙まで出てきちゃったよ、眼ぇ開きすぎて乾燥したかな・・・ってアレ?




・・・落ち着いてよくよく考えてみると、こんだけギャーギャー騒いでるけど、

もうとっくにカールが翼手化してヘリが飛び立っててもおかしくない・・・よね?



さり気なく、ついとカールの方を見やる。




・・・・・翼手化、してないんですけど。






な、何故に?



ーガチャッ!


「って、え?」


「すみませんでしたさん。・・・まさかそんなに嫌だったとは思わなくて」

「私も、様が泣くほど思いつめていたなんて気づかずに・・・!」




唐突にドアが開けられ、は唖然とした。口々に謝罪されて更に混乱。




なんだ急に下手に出て。私叫んだだけだよね?

何かしたっけ、私。




・・・ん?もしかして、さっき泣いたのが効いた、とか?




・・・な、泣き落としは有効だったのかー!!




それは考えてなかったっていうか今頃いないだろそんな奴?!


・・でもまぁ、これからのスキルには加えとこ。





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