白いダリアと蒼い薔薇 宙 11


















、お、ねえちゃん・・・?」


「あ・・・ ソ、ラ・・・?」






ソラ。ソラに違いない。

生きていてくれた。 嬉しいのに。

この・・不安は何だろう?


結晶化は・・・していない。翼手の身体にもなっていない。

赤いフードであるにも拘らず、だ。




瞬間、ソラのフードから覗く瞳が大きく揺らいで、ぽろぽろと涙が零れだした。


「ぅ・・・っ うあぁあああ!」

「・・・っわ!」


次いで勢いよく抱きつかれた・・・ど、どうしよう!?どうやったら泣き止むの?!



「うわ、だ、大丈夫、ソラ?! 何があったの?」


「うぁ・・お、おねえちゃんのために、うた、きかないように、がんばった、けど、

 ・・けど、あのうたが、うたが、よぶの!こっちにきてってよぶの!いやだって・・・

 ・・・いやだっていってるのに! いきたくない!いきたくないよ!

 ぼくはおねえちゃんといくの! いくんだから!よばないでぇっ!」



半狂乱とも言える勢いで泣きじゃくるソラ。

それほどまでに、・・・私を必要とするなんて。

でも逆に、私のせいでこうなってしまったのかもしれない。

しかし、彼は翼手化せずにいてくれた。生きていてくれた。

・・・私のしたコトが、こんな変化を生んでいた。




「・・・ソラ、 ありがとう ごめんね、私が、酷いこと頼んで、苦しくさせて。

 でも、でも。 生きててくれて、良かった」

「おねえちゃん・・・」


こちらからもぎゅうっと抱きしめ返す。ソラが落ち着いていくのが感じ取れた。






私が捻じ曲げた、勝手に変更した、ソラの運命。

どうか、どうか少しでも、良い方向へ。




そのためには、ソラは、こっち側にいちゃいけない。

せめて、赤い盾に保護してもらうしかない。


シフの内の一人だって生き延びたんだから、きっとソラも大丈夫。




・・・ごめんね、ソラ。約束を果たすのは、もうちょっと先になりそうだよ。






辺りを見回す。廊下の突き当たりに、一つのドアが見えた。

「ソラ・・ちょっとこっちに来て」

「?うん」


手を引いてその前まで連れて来ると、ノブを掴んで、まわした。鍵はかかっていないらしい。



―――ああ、願わくば、この扉が、ソラを、護ってくれますように。





明るくて、何も無い部屋の様だった。そこにソラを入れた。


「ソラ、次に此処に来る人についていって。そうしたら、また会えるから」


また会える、そう聞いて、不安顔だったのが少し嬉しそうになる。


「うん! またね、おねえちゃん!」


手を振るソラに、微笑んで、ドアを閉めた。

・・・これで爆発から逃れられるといいんだけど。




「っだああ! やっと見つけた!」

「全くもう、何処に行ってたんですか?!」

「あ、アレンさんにロナンさん・・ごめんなさい、置いてっちゃいました」


この二人にもソラのことは言わない方がいいのかな・・?

アレンさんの荷物にデルタ67が入ってるっぽいし、用心するに越したことは無いよね。







・・ッパリン、パリンガシャン!!






「! うっわー奴らも派手だなあ全く」

「はいはい無駄口叩いてる間にさっさと脱出しますよ・・・っ!!!」




ドンッ!!




「!!? うわ、い、何時の間に・・・」


背後で倒れる子供翼手。

迫っていたことにも驚きだが、ロナンさんの一瞬の銃捌きにもびっくりだ。

だがもちろんあの一体で終わりな訳はない。更に数体、その後ろに迫っていた。



しかし。



「く・・・アレン! 『シュバルツ』お願い!!」

「分かってる!」




ガシャン!



アレンさんが、取り出した手のひらサイズの小瓶を、翼手らの足元目掛けて叩き割った途端。





「・・・えっ? な、何、あれ・・・」





翼手たちは一瞬で黒に染め上げられ、その端から・・・消失した。










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