白いダリアと蒼い薔薇 宙 10





















ばたばたバタンッ!



ガサガサッ・・・どさー。




「・・ったく!何でこんなに・・っああ〜も〜ロナン、お前がやれよ!」


「アレン・・・もーちょっとでいいからさ、我慢ってのを覚えようよ?」


だね!」


「・・・はあ。全くしょーがないなぁ。じゃあこっち、様の方お願い」


「・・・面倒く「こら


「・・・・・分かったよ。はあーってぅをっ?!


「どうしたのー?」


こいつ何で下着だけなんだよ!?」


「へ? あぁ、ほら。暑かったしね、昨日とか」


「いやいや、なんでそんな冷静?!?」


「慣れてるし★」


「・・・と、とりあえず服・・あ、やべ」


「踏んじゃってるね?」


「・・・言うな」


「あっはっは、不器用さんv」


だあっ!だから言うなって!! くそー服・・服・・あーもうこれでいーや。


 様ー御起床願いマース」


ばさっ


ぷち、ぷち、ぷちん





・・・話し声がする・・・・・

まだ眠たい、のに・・誰?聞いたことあるような、無いような・・・


・・あれ、私、身体起こされてる?




「そんな言い方したらダメだよアレン。もっとこう、やさしーく」


「・・・う、にゅ?」


「あ、起きた。 お早う御座います、様。気分は如何ですか?」


「そっちこそのんびりしてんじゃねえよっ!・・・あ、工場長の写真!」


ぼんやり瞼を押し上げると、茶色の髪の・・・多分、ロナンさんが覗き込んでいた。

うつらうつらしている間に、私のすぐ傍にいた黒髪の男性が急いで部屋から出て行った。


バタバタバタ・・・と音が遠ざかる。


「起き上がれますか?」


「あ、はい・・・えと、ロナンさん、ですよね?」


確かめると彼は微笑んだ。私が覚えていたことが嬉しいらしい。


「はい。さっき走っていったのがアレン、共に貴女の護衛を任せられています」


ああ、あの人がアレンさんだったのかと一人納得。

しかし今まで何処にいたのだろう?一度も見かけなかったはずだけど・・・


「さあ、行きましょう。此処は危険です」

「えっ?」



ドドドッ ドンッガンッ・・・バァン!!!

「「!」」


ダダダッバタバタバタ・・・



「え、ええっ?! な、何っ?!」

「この施設が先ほどからテロ組織に攻撃されているんです。・・玄関扉が突破されたようですね・・・アレンが戻ってきたらすぐ脱出しましょう。幸い此処は二階ですから、すぐ襲われることは無いでしょうが・・・」


とうとう赤い盾が到着したらしい。空気の震えとなって肌を刺激する銃声に、今更ながら恐怖した。

私は今、「赤い盾の敵」となる位置にいるのだ。本当に、殺されてもおかしくは無い。


・・・でも絶対に嫌だ。そんなことで死にたくない。

だから精一杯、勇気を持って、私にしかできない方法で、生き抜いてみせる!





・・・とまあ、気合入れたところでとりあえず落ち着こうと深呼吸。

まあ、赤い盾だって、まさか人間をいきなり殺しはしないだろう、きっと。

うん、大丈夫。 私は死なない、死なない、死ぬはずが無い。



何度も繰り返して自分に言い聞かせて自己暗示してみたら、案外落ち着いた。

急いでベッドから出て靴を履く。肌寒いが、朝起きたときよりはマシになっている。



廊下に出ると、丁度アレンさんが戻ってきたところだった。


ぜーぜーと肩で息をしている。


「あ、おつかれさまー」

「・・・・・つ、疲れた・・マジで・・・・・じゃ、行くか」




大広間の方には行けないので、端の階段から降りる。

さっき叫び声(多分小夜)がして、また銃声がして、今は静かになっている・・・けど。



「うわ・・・」


廊下は、最早血の海と化していた。

散らばる肉片。漂う血の臭い。


くらくらした。






「・・・・っあああぁあ!?」

「ぅえ?!」

「え、どーしたんですか?!」


・・・突然アレンさんが叫んだ。




「自分の荷物忘れたあああぁ!」

「ええー・・別にそんなのどーでもいいじゃないですか」

「い、いや絶対マズい!あの中にはS−25とかP6−738とかD−67改良試作品とか最高傑作の「シュバルツ」までも入ってるのに!!」


次々と羅列される薬品?の名前。

デルタ67、と聞こえた瞬間、ロナンさんの顔色が変わった。てか口調すらも変わった。



「・・・っな?!! アレン、何でそんな重要なもの忘れて来るんだよ馬鹿!!」


「ごごごごめん今すぐ取って来る!!!」


言うが早いか沢山の写真立てをロナンさんに押し付け、

盛大な音と共に階段を再び駆け上がるアレンさん。必死だ。



・・・あれ? 荷物、 といえば・・・・・




「・・・私の」

「え?」



「私の・・荷物もありましたよね? ちゃんと運んでくださってますか?」


「・・・・・あっ」

「・・・」

「す、すいませっ・・!ちょ、今すぐ戻ってきますんで!!」



どだだー・・・


土ぼこりでも巻き上げそうな勢いで、本日二度目の疾走。

あー良かった確認して。

じゃないと私の大切な携帯とか漫画とかが焼失しちゃうところだったよ。



ふう、危ない危ない・・とほっと一息・・つこうとした所で。




バンッ!!!

「ぅぉぁっ!?」


「外の様子を見てくる!!」

「カイ兄ちゃん!!!」



カイのご登場。

ビックリした〜・・・つい声出しちゃったけど気付かれてない、よね?

それにしても、初めて主人公サイドのキャラ見ちゃったよ。

なんていうか、体育会系!てな感じでかっこいいなあ。



階段の端に身体を寄せて息を潜め、成り行きを見守る。

カイは左右を見回した後、こっちには見向きもせずに左の廊下を走っていった。

良かったぁ・・・ていうか何で私がこそこそしなきゃならないんだ。



カイが外に出たって事はもうちょっとで小夜が正気に戻って、ファントムも出てきて、

それからそれから・・・クララさんが自爆。


・・・え、もうそんなところまで来てるの?!

ロナンさんとアレンさんが戻ってきたら急いで外に出ないと。




とりあえず階段の残り数段を下りてみる。

肉片や血溜まりをできるだけ踏まないように立って廊下を見渡してみた。

カイはもう、部屋に入ったようだ。ということは今あそこにはおっそろしい顔した小夜が・・・

・・・うわー見たくない。






そろそろ二人が戻ってきてもいい頃だろうか。

もうちょっと待ってこなかったら私も行ってみよう。

そう思って振り返った、先には。



赤いフード。



――――――右手に、青い コスモス。







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