白いダリアと蒼い薔薇 宙 9
「ぅ・・・あっつう〜」
結局、暑くて起きてしまった。
今は何時なんだろう?一応外は明るいから日は昇ってるみたい・・・げ。
窓の外は一面の霧だった。うっすらとコンテナが見えるか、見えないかぐらいの。
こりゃー、さぞ「ファントム」にはお似合いだろうなあ・・・と再びベットに潜り込んだが、
目が既に冴えてしまってどうにも寝付けない。
・・・まあ、いいか。
多分今日こそがアニメでいう、「ジャングル・パラダイス」にあたるんだろう。
だったら、別に今からソロモンに引っ付いてるのも悪くは無い。
・・・あ〜でも着替えるのめんどくさ。 脱いだ服と・・ガウン羽織ってりゃいいか。
「・・・おはようございまーす・・・・・・」
中庭で集まるソロモン、ヴァン、カール。
あんまり邪魔しちゃいけない気がして控えめに挨拶すると、全員がバッッ!!と振り向いた。
うっわあ、怖ぇ〜。心配しなくてもあなた方の話なんか聞いてませんよ。
・・・大体知ってるけど。
「ああ、おはようございます。随分早いですね」
にっこり笑うソロモンの向こう、コンテナのロック?にヴァンのカードが差し込まれるのが見えた。
案の定開かない。
「僕のカードでも開かないのか・・・」と佇む彼を押しのけて、カールがコンテナの前に立った。
自身のカードを差し込む。
おお!ってことは今から、かの有名なディーヴァのお姿(?)が拝めるわけだね!?
こりゃー、どさくさに紛れて見るっきゃないでしょう!!
「あ、開くんですか、そのコンテナ? 何が入ってるんですか?」
ソロモンの脇をすり抜けて、カールの元へたたっと駆け寄る。
あ、とソロモンが声を上げるけど、聞かないふり。
私だって、眠ってるディーヴァなら見てみたい!・・・・あ、そういえばまだ繭の中だっけ。
まあいいか。繭でもいいから見てみようっと。
カールの後ろに立つと、丁度彼が扉を開いたところだった。
コンテナの中身に気を取られすぎていて、私には気付いていないようだ。
・・・好都合。後はそっと覗いてみるだけっ!!
・・・しかし。
薄暗いコンテナの中、何か白っぽいものが見えた、か見えないうちに、すごい勢いで後ろに引っ張られてしまった。
「・・・、わ」
「だめですよ、さん。企業秘密、です」
・・・ちっ。ソロモンめ。ちょっとぐらい見せてくれたっていいじゃんかー!
不満げな気持ちが顔に出てしまっていたのか、ソロモンは苦笑して・・・
・・・あれ、・・何故か、笑みが黒い気がするよ。
「好奇心が強いのは良いことですが・・・行き過ぎるのもまた、考え物ですねぇ・・・?」
「す・・っすみませんごめんなさい!にっ二度寝してきます!!」
ひいい!怖!
ソロモンの笑みのあまりの黒さに引きつった笑みのまま後ずさる。
彼の肩越しに、コンテナの中を見ながら歌を口ずさむカールが見える。
ああ、後ちょっとで見れたのに!
しかし自分で言い出した手前二度寝しないわけにもいかず、大人しく館に向かって回れ右。
大体、今日は危険だからってソロモンにくっついてるために起きてきたのに、なんだって私は二度寝なんか・・・
くらり。
・・・あれ?
一歩踏み出すと同時に、眩暈が襲った。思わず膝をつく。力が入りずらい。
「さん?大丈夫ですか?」
「眠い・・・です」
「眠い?やっぱりまだ早すぎたんですよ。一人で帰れますか?」
「多分・・・」
何とか立ち上がると、ふらふらしながらも何とか歩いて自分の部屋まで行き、ガウンと服を脱いでから、文字通りベッドに倒れこんだ。
本当に眠い。
・・・でも、嫌な感じじゃ、無い。
ほんの一瞬で、眠りについた。
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