傘立てトリップ
trip.7
「・・・の、あのう、大丈夫ですか?」
ぱたぱた。開いた目に最初に映ったのは赤い何かが揺れている様子だった。
「あ、気付きましたか?良かった、助からなかったらどうしようかと・・・」
が目を開けたのに気付くとうれしそうに顔を覗き込む。
・・・?あれ、私あれからどうしたんだっけ。もしかしてまた気絶してたのかな。
それより誰か目の前にいる・・・?
「僕、アレン・ウォーカーっていいます。あなたは?」
え?
あ、アレン?・・・もしかして本物?
「・・! です・・」
「、ですね。わかりました!早速建物の中に入りましょう?
といっても・・・立てそうにないですよね。 じゃあ・・・よいしょっと」
「・・・っ?!?!」
私がアレンに名前を呼ばれたことに我を忘れている間に浮遊感を感じ、
アレンに抱き上げられている事実に、さらに意識が飛びそうになる。
・・・というより、もう頭の中はお祭り状態である。
「っひ・・・!」
な、ななななな何が起こって・・
え、ちょ、いきなりお姫様だっこなんてものを!?
ア、アレン・・紳士すぎるって!
だめだ。もう、幸せすぎてこのまま死ねる・・・・・!
ああ、やっぱり私、アレン、君のことが・・・
ぎゅううっ
「だいすき・・・っ!」
「え・・・?!」
抱えあげた女の子に抱きしめられて、突然の告白を受けたアレンは目を見開いた。
いや正確にはそれにも驚いたのだが、更にアレンの目の前に、
突如として黒いもやのような物が現れたのだ。
慌ててをみると、疲労のためかまた気を失っているようで、更に焦る。
どうしよう。このもやは敵か、それとも味方か。
科学班の人たちにも知らせたいけれど、女の子をかばったままでは十分にも動けない。
しかしアレンがそんなことを考えている間に、二人はもう、もやの中に吸い込まれていた。
「な、何が起こっ・・・でえぇえええっ!?」
その時。
教団のモニター前の科学班、その他諸々の関係者、野次馬たちは、
なかなか入ってこない二人に痺れをきかせ始めていた。
今も少女はアレンに何事かささやいた様だが、声が小さすぎて聞こえない。
こうなったらリナリーに呼んできてもらおう。
そう思ってコムイが背後にいる妹に「あ、リナリー・・・」というか言わないかの時、
急にモニター前にどよめきが起こった。
「え、何だよ、あれ・・・」
「黒い霧?」
「おいおいあの女の子、本当に人間か?」
アクマなんじゃねえの、とのぼやきに、急いで振り返るとそこには、
黒い何かに包まれた二人が見えた。
急に不安が募る。
自分の判断が間違っていたのか?
しかしアレンに事前に確認させたはず。
そしてもしアクマだったとしても、何故アレンは破壊しない?
混乱した頭を落ち着けるように、もう一度確認しようとモニターを見たとき。
そこには誰も、いなかった。
「っな・・・!」
そして驚くのはまだ早かった。
目を見張る一同の背後、片付けられていない、散らかし放題な室長の机の上。
うず高く詰まれた書類、文献、手紙類のちょうどてっぺんに、
降り立った者達がいたのだ。
とんっ
「ああ、やっと地面、に・・・・・え?」
ぐらっ
「う・・・うわーーーーー!!!?」
ドシャア、バラバラゴンっという凄まじい音に、さすがに全員が振り返った。
そこにはついさっき消えたばかりのアレンと、その腕に抱きかかえられた少女。
数秒の沈黙の後。
「「な・・・なんでここに?!」」
室長とアレンの声が、見事に重なった。
-- + ----------------------------------
紳士とお姫様だっこは関係ないと思う。
Back Next