傘立てトリップ
trip.4
廊下に出ると、ティキが連れて来たらしいレロまでもが消えていた。
十中八九が連れて行ったのだろう。
さてどっちに行ったかと二人で考えていると、ティキの耳にドアが閉まる音が聞こえた。
「・・あっちだ、行くぞロード!」
「うん。あっちには確か・・・」
あの甘党の部屋があったはずだから捕まえてくれてるかも、と淡い期待を抱きつつ、
二人は最初の角を曲がった。
それから10分ほど後、二人は某甘党大男の部屋の前にいた。
一つ一つのドアを開けて確かめてこれが何部屋目かもわからない。
ついさっき、ティキの能力である通り抜けについて思い出した時にはすでに遅く、
ティキの頭には大きなたんこぶができていた。
ひりひりと痛むそれを押さえながら、ティキはドアを開けた。
するとそこには黙々と飴を食べる男以外誰もいず、二人はまたハズレかとそのままドアを閉めようとして、気付く。
(あれぇ?あの飴の包み紙・・・僕の部屋にあったのと同じやつだよねぇ?)
(ん?何であの窓全開なんだ?この寒い夜に・・・)
((・・・・まさか!?!?))
「・・っおいお前!ここに女の子が来なかったか?!」
「・・・・・・来た」
「その飴くれた奴?!」
「・・?・・・、ああ・・・」
「今何処に?!?」
「・・・わからないが、あの窓から、出て行った」
「なんで止めなかったんだよ、明らかに不審者だろう?!」
「・・・・・
飴、くれたから・・・」
「「この甘党がぁああぁあ!!!!!」」
「ほら、ティーズ!!とレロ見つけてこい!!
は傷つけるなよ・・・後でちょっと、用あるし」
「でも見つけても空中だよねぇ。どうやって捕まえ・・・・あ」
慌てて蝶型ゴーレムを窓から放つティキ。のんびりと窓の外を眺めていたロードだったが、
ふと後ろを振り返った瞬間青ざめ・・・そして逃げるように目にも留まらぬ速さで部屋から出ていってしまう。
「ん?何だよロード・・・って何処行くんだよ?!まだ見つかってないじゃ・・・え?」
そして気付いたティキが振り返った先に見たものとは・・・
「ティーキーぽんv」
「せ、千年公・・・・?」
伯爵がいた。背後に得体の知れないオーラを背負って。
思わず後ずさる・・・が、すぐ後ろは窓だ。
「いつまでたってもちゃんが来ないので何をしているのかと思えバ・・・v」
「すすすすみませんごめんなさいちょっと目を離したスキにロードが・・、!」
「僕は何にもしてないよ!ティッキーの野朗が・・ぎゃっ!」
いつ戻ってきたのか、すかさず反論してきたロードと、ティキの二人の襟首を
伯爵がいとも簡単に、かつ目にも留まらぬ速さで掴む。顔も目も笑っているのが逆に怖い。
「ちゃんは何処に行ったんでス?」
「た、多分窓から外に・・・」
「レロで追いかければいいでショウ、ロード?」
「も、持ってかれちゃったぁ・・・」
「・・そうですカ、それは大変ですネ、二人共?」
「「そ、そうですよねぇ?あはははは・・・・・;」」
引きつった笑いを浮かべてみる二人。だがそれももう意味を成さないかもしれない。
「こうなったら2人共・・・」
((ひいぃいいーーーーーーー!!!))
今にも殺られる?!!と2人が死を覚悟したその時、あわやという所でティキの腕に鋭い痛みが走った。
「っつぃだだっ!!何・・ってティーズーーー!!!お前やっと帰ってきたんだな?!」
「・・・ティーズに追わせてたのですカ?」
首を傾げ、問いかける伯爵。
「そうなんすよ、さっき・・ティーズ、とレロが見つかったんだな?!何処にいたんだ?」
もう必死である。なんてったって襟首は未だ伯爵に掴まれたままだ。
しかしもうちょっとでこの戒めから開放されるかも知れない。
だがその願いも、ティーズの答えによって儚い夢となってしまった。
「どうしましタ、ティキぽん?」
「い、いや、あの、その・・・・・・」
これは、どう言ったらいいんだろうか。というか言えない。
(が・・・消えた?!)
そんなことがあるのだろうか。しかしティーズがそう言っている以上、本当のことなのだろう。
いや今はそんなことより・・・
「・・・ということでとレロ捕まえに行ってきます!!」
「ぼ、僕も行ってくる!!!」
「そうですカ?じゃあ行ってらっしゃイv」
((やっと開放されたーーー!!!))
とりあえず伯爵から逃れることを優先したティキ。
これでやっと自由になれると二人が胸をなでおろしていると。
ぺいっ
「「ひぎゃあぁああああーーー!!!!」」
窓から放り投げられた。
「心配しなくてもノアなんですから死にませんってバvv」
「そんな問題じゃ・・ってか実はまだ怒ってただろぉ千年公ーーー!!?」
「明日の朝までに見つけてきてくださいネv」
「絶対無理なのわかってて言ってるでしょう伯爵?!」
「さア?それよりもう少しで地面ですよティキぽん、ロード?」
「「へ?」」
ドゴンッ
「あらあラv」
口では心配しつつも、どこか楽しそうな様子の伯爵。
2人が地面に激突したのを見届けてから、くるりと窓に背を向け立ち去ってしまう。
結局のところ、二人に嫌がらせしたかっただけ・・・だったのかもしれない。
「仕方がないですネ、Lv.1にでも追わせますカv」
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伯爵的ストレス発散方法。
本当どうでもいいけど甘党さんの存在、完全無視しちゃってる・・・;
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