冷たい夜風が窓から吹き込んでいる。

少し湿ったそれはすぐにの体にまとわりつき、
はほっぺたに手をやると顔をしかめた。
そして同じように隣で寝転がっているアレンを見、
こちらに背を向けている彼を抱きしめた。

「ねえアレン」

「何ですか?」

いつもと変わらぬ受け答え。
女の子に抱きつかれてるって言うのにたいしたものだ。
いやこれは私のことを単なる仲の良いエクソシスト仲間だと
思っているから、かも知れない。
だって抱きしめている左手は心臓の上に触れているのに、
さっきからちっとも変わりが無い。
少しだけ、がっかりした。

「もしも、もしもだよ?二人で戦ってて、
 向こうにあるイノセンスをとってこなきゃいけなくて、
 私が死に掛けてアレンに先に行くように叫んだら・・どうする?」

が、ですか?」
「うん、そう」
抱きしめる腕に、また少し、力をこめる。
風のせいか の腕とアレンの服が重なるところが、しっとりと濡れてきた。

「・・・そうしたら、たぶん、行けないって言うと思います。
 怪我してる仲間を放っておいてイノセンスを取りになんて
 行けませんから。・・?」

答えてから更に一層強くなった腕に、アレンが心配そうな声で問いかける。
はそれには答えず、アレンより遥かに多い心拍数を抑えながら、
できるだけ平常に聞こえるように声を絞り出した。
更に濡れてきた服は、もはや夜風のせいか、の汗か、わからない。

「私、私もね、もしそうなったら、きっと行けない、って言うと思う。

 だけどね、私がそう叫ぶのは、仲間を一人にしておけないからじゃないの。
 私が、一人になるのが怖いから。 一人で死ぬのが・・・怖いから。」



後ろから抱きしめているから、アレンの顔はわからない。
いや、顔なんてわからなくていい。
きっと、私もアレンも酷い顔をしているだろうから。

アレンの背に額を当てて、目を閉じる。
神の使徒がこんな考えをしているなんて、自分でもおかしいって思うけど。
それでも、孤独が・・とてつもなく怖い。



暫く沈黙が続いた後、不意にアレンが動いた。
私の腕が離れ、反対に抱きしめられる。
驚いて目を開けると、
そこには私の予想と違う、やさしい目があった。

「誰だって、孤独も、死も怖いですよ。
 僕達はいつも、ギリギリのところで戦っていますし。
 
 ・・僕も、さっきの言葉について説明してもいいですか?
 僕が行けないって言うのは、仲間を放っておけないってのもありますけど、
 本当のところは、貴女を、を一人で死なせたくないからなんですよ。

 結局は、皆同じなんです。皆、誰かを守るために戦ってる。
 僕が、を守りたいように。
 それが自分でもいいじゃないですか。僕は賛成しますよ。
 ただし、僕が傍にいる、てことが条件ですけどね?」

そうじゃないと僕が貴女を守れませんから、といって笑うアレンに、
は伏せ目がちに、なんて台詞言ってんのよ、と呟きながらも、
もう一度、今度は優しく、背に手を回した。




さっきのアレンの言葉が、のいたるところに染み込んでいくのを感じた。
彼女の皮膚に染みこんでいく、夜風のように。

















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記念すべき(?)夢小説一作目!
短い上に結局甘くなってしまいました;
ほんのりシリアスを目指してたんですが・・・

どうしてとアレンが一緒の部屋のベットの上にいるかというと、
昼間、アレンがの部屋に訪れて
遊んだりお菓子を食べたりしているうちに夜になってしまったからです。
疲れて寝てたんですね。
ティムもいますよ。残ったお菓子を食べるのに夢中になってましたが。
ていうかティムって食べ物を食べることができるんでしょうかね・・・・・?

叶ノ月



DreamMaker1